2025.01.17 Archivesin shop BLOG
デザイナーズブランド専門バイヤー【業界歴12年のCharlieが選ぶ】過去に見た作品で心に残った洋服5選-メンズ編-
こんにちは!NEXT51の2階デザイナーズブランド専門ショップDesign for livingでディレクション・バイヤーを務めておりますチャーリーと申します(あだ名です。バリバリの日本人です笑)。
USED MARKET NEXT51にご来店いただいたことのある方の中には、デザイナーズブランド専門ショップは他のインショップと雰囲気が違っていたりするので印象に残っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
僕は入社して約8年、前職でも同業他社で勤めていました。この業界に入って今年で12年目になります。
これまでこの目で数万着くらいは服を見たり、査定してきたと思いますが、今回はその中でも特に印象に残っているものたちを5つ選んでご紹介したいと思います。
構造などやや小難しい話もあるかと思いますが、中には見たことのないようなものもあると思いますので、ご興味ある方はぜひお読みください!
1. John Galliano 10AW GREAT COAT ‘OPIUM’ EMBROIDERY
2010年秋冬コレクションのショーピース。ファッションが大好きで、当時は「三度の飯より服」だったらしいお客様よりお買取りさせていただいたものです。クラシックな形が格好いいですね。
4年くらい店頭で飾っているのでご覧になられた方も居られるのでは?
こちらは当時の上代で税込み\691,950-。生産数は恐らく世界でも数えるくらいではないでしょうか?今同じものが再販されるとすれば、プロパーだと100万円を超えてきそうですね。
当時の定価や生産数もさることながら、注目したいのはこの装飾。
これ全部手刺繍なんです。気が遠くなるような細かさですよね。
ラグジュアリーブランドよりもラグジュアリーしている、印象的な一着でした。
こちらは店頭で飾っていますが既に買い手が居られるため売約済みとなります。
ケースの中に飾って保管しているため普段は前面しか見られませんが、背面はこのようになっています。
John Galliano Fall 2010 Menswear fashion show LOOK37
2. Carol Christian Poell 2016 DEAD END GM/2621 BRUCH/9 CHAIN-SEAM ONE-PIECE DEAD END 1 BUTTON JACKET
キャロルクリスチャンポエルのテーラードジャケット。HELMUT LANG等と同時代に活躍していたので名前をご存知の方もいらっしゃるのでは?
こちらのブランドは特殊で、一般的なブランドのように春夏・秋冬といったような展開方法ではなく、ひとつのテーマを設け、ブランドの中でテーマに向けたものが完結するまでそれが数年掛かろうと同じコレクションを展開し続けます。
こちらは数あるテーマの中から、「DEAD END」と呼ばれるシリーズのアイテムです。
一見何の変哲もないテーラードジャケットですが、一体どこがDEAD ENDたる部分なのか。内側を見てみましょう。
縫い目が繋がっていないのがお分かりになりますでしょうか?
このジャケットは各部位が「一枚の生地で」形になっているのです。つまりこのテーラードジャケットはたった3枚の生地から輪郭が作られています。
皆さん一度お手持ちのスーツのジャケット等を見てみてください。
多くの服は身頃に複数のパーツ、袖にも複数のパーツといった感じで、それらパーツを縫い合わせることによって形作られています。
このシリーズを初めて知った時の衝撃は今でもおぼえています。どんな生地を使ってどんな設計図を書いて形にするのか、なんだか建築みたいですよね。
このシリーズはコートやシャツ、パンツも存在し、時にはレザージャケットの袖に繋がったグローブまでもが一枚革で作られています。
このジャケットには他にも変わったディテールが隠されており、こちらでまとめているのでご興味ある方はぜひお読みください!
Carol Christian Poell DEAD END CHAIN-SEAM ONE-PIECE DEAD END 1 BUTTON JACKET
3. Isabella Stefanelli 20AW Virginia 手織りツイードグレンチェックコート
こちらは先ほどご紹介したCarol Christian Poellに過去に在籍していた女性 イザベラステファネリ氏が手掛けるシグネチャーブランド。
こちらも一見何の変哲もないものに見えますが、細部にディテールが隠されています。
こちらの一着はほぼすべての箇所が手縫い(ボタンホールまでも)で処理されているのですが、僅かな箇所のみミシン縫いで処理されています。
ミシン縫いによりシングルステッチでアームを縫い付けた後、余った縫い代を手縫いで留めています。
手縫い
ミシン縫い
ミシン縫いに使用されたこの糸はMara社の、本来登山用のアイテムなどに使われるもので、鋭利な刃物を用いないと絶対に切ることが出来ないほど強靭と言われています。
このコートはミシンで縫製が施されている箇所が肩線・腕周りのみですが、天衣無縫という言葉があるように、縫い目があるということはそこから解けるということにもなります。
この「切れない糸」は生地に使用される繊維よりもはるかに強度を持っているので、むやみに使用するだけではかえって生地が破けやすくなってしまいます。
片側を手縫いにすることにより糸のテンションをコントロールしながら解けにくくする箇所とそれを緩和する為の手段を使い分けています。
さらにこのIsabella Stefanelli、生地のデザイン・服のデザイン・生地の製造・縫製といったほとんどの工程をほぼ一人で行っています。
日本以外でも世界中で取り扱われているブランドであり、量産の効率化を図るため、生地を横向きに使い裾や袖口にセルヴィッジ(いわゆる耳)がくるよう計算され、縫製箇所が非常に少なく作り上げられています。
このVirginiaでは襟ぐり・前立て・肩まわりの三か所しか縫製箇所がありません。服を着ているというよりは、まるで布地を纏っているような服ですね。
こちらのコートについても、こちらでまとめているのでご興味ある方はぜひお読みください!
4. Yohji Yamamoto Pour Homme 91AW 6.1 THE MEN
Yohji Yamamotoの1991年秋冬、COMME des GARCONSと合同でショーを行った6.1 THE MENと呼ばれるコレクションのアイテム。
当時完全受注生産でのみ販売された商品です。
カラーリングやバックプリントも様々な種類が存在します。
シーズンのテーマは「反戦」。戦争に纏わる背景を持ったアイテムが多数発表されました。
こちらのアイテムはヨウジヤマモトの中でも物凄く有名なモデルなのですが、これにもバックボーンが存在します。
1940’s Vintage A-2
ヴィンテージウェアの中には、戦時中、フライトジャケット等に兵士たちがピンナップガールのペイントを施したものが遺っており、これが由来となっています。
背中に女性を背負って戦うという男気がとてもかっこいいですね。
またこちらのシーズンはショーの内容も非常にユニークで、コムデギャルソン・ヨウジヤマモトともにショーにはモデルを生業とする人間が一人も出演していません。
出演したのはThe Velvet UndergroundのジョンケールやEasy Riderのデニスホッパー等、ミュージシャンや俳優たち。日本人からはデビュー前(!)のBlankey Jet Cityの面々やYMOからお二人(細野さん・高橋さん)が出演されていました。
スタイルが良くなくても、顔が格好良くなくても、こういった人間力のある人たちに本当の格好良さが詰まっていると思うので、僕はこのショーの形式が大好きです。
5. Yohji Yamamoto Pour Homme 00SS アジアの不良
(クリックするとコレクションのページへ飛べます)
最後は自分が持っている服から。僕は自分にとってのここを超えるブランドはもう出てこないだろうなと思っている程ヨウジヤマモトが好きなので、またヨウジヤマモトです。笑
2000年春夏コレクションの一着。アジアの不良というテーマだった時期のジャケットですが、特段有名なアイテムというわけではありませんし、こちらも一見何の変哲もありません。
ではなぜ印象に残っているのか、それは…
このジャケット、たった一着にポケットが18個も隠されているんです。
ラペルの間、ポケットの中、シームに沿って隠しポケットなどなど…
1990年代くらい、当時のアジアの不良たちが着ていた服の中には、タグの裏側が隠しポケットになっていたりするものがあったそうです。
そこにクスリを隠したりして事なきを得たそうですよ。
リアル90年代に色々と悪さをしていたであろう、うちのマネージャーから聞きました笑。ネットの海には転がっていない情報ですけどね。
コレクションのページへ飛んでもらえればわかりますが、ここでもモデルは全員アジア人。
ヨウジヤマモトはメンズのコレクションなのにモデルが全員女性だったり、そこにはVivienne Westwoodが出演していたり、二人組で登場したりと、ショーの形式も非常にユニークでとても面白いです。
以上、業界歴約12年の僕が選ぶ印象に残っている服5選でした。
-メンズ編- としていますがもう書きたくありません。笑
お読みいただきありがとうございました!
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